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オチフルイかいじゅうろうてがらばなし

十二神貝十郎手柄話

国枝 史郎

Read 十二神貝十郎手柄話 (オチフルイかいじゅうろうてがらばなし) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 127,035 characters · 254 screens

Aozora Bunko

云い云いお蝶は四辺を忍ぶように、指の先で絃を弾いた。

「バラードという楽器でございますの。和蘭の若い海員などが甲板の上などで弾きますそうで」

バラードの音色は聞く人の心を、強い瞑想に誘って行った。

聞いている京一郎の心の中へ、海を慕う感情が起こって来た。海! 海外! 自由! 不覊! ……そういうものを、慕う感情が、京一郎の心へ起こって来た。不意にお蝶はうたい出した。

三

※(歌記号、1-3-28)かすかに見ゆる

やまのみね

はれているさえなつかしし

舟のりをする身のならい

死ぬることこそ多ければ

さて漕ぎ出すわが舟の

しだいに遠くなるにつれ

山の裾辺の麦の小田

いまを季節とみのれるが

苅りいる人もなつかしし

わが乗る船の行くにつれ

舟足かろきためからか

わが乗る船の行くにつれ

色も姿もおちかたの

ふかき霞にとざされぬ

われらの舟路! われらの舟路!

それはこういう歌であったが、ここまでうたって来るとうたい止めた。

「この後にもあるそうではございますが、残っていないのでございます。ええこの後にも続く歌が。……妾はどんなに後に続く歌を、知りたいと願っているでしょう。