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じゅうはちじょうおつ
十八条乙
山本 周五郎
Read 十八条乙 (じゅうはちじょうおつ) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 13,127 characters · 26 screens
月があけて十二月五日、西条家へ大目付の滝沢忠太夫が来て、萩岡左内から出頭せよとの書状を示し、すぐ同行するようにと促された。萩岡は上席中老で、安田又次郎を呼びだしたのも彼であった。――城中へゆくのかと考えていたら、連行されたのは三の丸下にある大目付役宅で、着くとすぐに大小を取られたうえ、火鉢もない狭い部屋へ入れられた。そのまま三日間なんの沙汰もなく、庄兵衛はその薄暗くて狭い、火の気のない部屋ですごした。朝と夕方の二度、下役の者が食事をはこんで来、片づけに来たが、なにを問いかけても黙ったままで、一と言の返辞もしなかった。そして四日めの、およそ午の刻かと思われるころ、初めて吟味部屋へ呼びだされた。
そこは二十帖ばかりの広さで、上段があり、その下に滝沢忠太夫と、二人の与力がいた。侍の吟味には役支配の列席する規定がある。庄兵衛の正役は大番組だから、寄合がしらが出ていなければならないのだが、そんなようすはみえなかったし、書き役の机さえもなかった。――やがて萩岡中老が、ただ一人あらわれ、上段に坐った。滝沢と与力二人は礼をしたのち、庄兵衛のほうへ向き直り、穏やかな口ぶりで、これは正式ではなく仮の吟味だから、やかましい規則は省略する、そちらも楽にしてよろしいが、言葉だけは改めると云った。