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はんしちとりものちょう
半七捕物帳
岡本 綺堂
Read 半七捕物帳 (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 15,208 characters · 30 screens
「なるほど、お時の口から心中というようなことを聞いていましたが、さすがに今すぐとは思いませんでしたからね。なにしろ、一方には縄付きが二人出る。一方には二人の死骸の検視を受ける。辰伊勢の寮は大騒ぎで。それからそれへと噂が立ったと見えて、夜の更けるまで門の前はいっぱいの人でしたよ」
「辰伊勢の息子と誰袖はどうして心中したんです。それが又なにかお時と寅松とに関係があるんですか」
私にはまだその訳がちっとも判らなかった。半七老人は更に詳しく説明してくれた。
「その誰袖という女は人殺しをしているんです。辻占売りのおきんという娘を殺したのは誰袖の仕業なんです。なぜそんなことをしたかと云うと、前にもお話し申した通り、誰袖は主人の伜の永太郎と深い仲になって、証文を踏み倒すの何のという魂胆でなく、男にほんとうに惚れ抜いていたんです。すると、どうしたはずみか、その永太郎が辻占売りの評判娘と関係が出来てしまったので、誰袖はそれを聞いてひどく口惜しがって……。ああいう商売の女のやきもちは人一倍で、そりゃあ実におそろしいもんですからね。ふだんから仲好しの仲働きに云い付けて、おきんが廓から夜遅く帰って来るところを、無理に寮のなかへ呼び込んで、さんざん怨みを云った上で、まあひどいことをするじゃありませんか。