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はんしちとりものちょう
半七捕物帳
岡本 綺堂
Read 半七捕物帳 (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 15,208 characters · 30 screens
「はあ、左様でございましたか。年を取りますと、だんだんに勘がわるくなりまして、御贔屓様に毎々失礼をいたして相済みません。旦那もこれから廓へお出かけでございますか。こういう晩にお通いもまたお楽しみなものでございます。わが物と思えば軽し傘の雪とか申しましてね。ははははは」
こっちの出鱈目を知っているのか、知らないのか、徳寿は如才なく調子をあわせた。
「なにしろ悪く寒いね」
「この二、三日は冴え返りました」
「これから田圃を突っ切るのは楽じゃあねえ。どうだい、あすこで蕎麦の一杯も啜り込んで威勢をつけて行こうじゃねえか。おまえも附き合わねえか。廓へはいるのはまだちっと早かろう」
「はい、はい、どうも御馳走さまでございます。わたくしは下戸でございますけれど、御酒を召しあがるお方は一杯あがらなければ、この田圃はちっと骨が折れます。はい、はい、ありがとうございます」
一町ばかりを引っ返して、半七は小さな蕎麦屋の暖簾をくぐると、徳寿は頭巾の雪をはたきながら、古びた角火鉢へ寒そうに咬り付いた。半七は種物と酒を一本あつらえた。
「これはあられでございますね。江戸前の種物はこれに限ります。