Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
はんとういっきしょう
半島一奇抄
泉 鏡花
Read 半島一奇抄 (はんとういっきしょう) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 13,324 characters · 27 screens
古奈、長岡――長岡を出た山路には、遅桜の牡丹咲が薄紫に咲いていた。長瀬を通って、三津の浜へ出たのである。
富士が浮いた。……よく、言う事で――佐渡ヶ島には、ぐるりと周囲に欄干があるか、と聞いて、……その島人に叱られた話がある。が、巌山の巉崕を切って通した、栄螺の角に似たぎざぎざの麓の径と、浪打際との間に、築繞らした石の柵は、土手というよりもただ低い欄干に過ぎない。
「お宅の庭の流にかかった、橋廊下の欄干より低いくらいで、……すぐ、富士山の裾を引いた波なんですな。よく風で打つけませんね。」
「大丈夫でございますよ。後方が長浜、あれが弁天島。――自動車は後眺望がよく利きませんな、むこうに山が一ツ浮いていましょう。淡島です。あの島々と、上の鷲頭山に包まれて、この海岸は、これから先、小海、重寺、口野などとなりますと、御覧の通り不穏な駿河湾が、山の根を奥へ奥へと深く入込んでおりますから、風波の恐怖といってはほとんどありません――そのかわり、山の麓の隅の隅が、山扁の嵎といった僻地で……以前は、里からではようやく木樵が通いますくらい、まるで人跡絶えたといった交通の不便な処でございましてな、地図をちょっと御覧なすっても分りますが、絶所、悪路の記号という、あのパチパチッとした線香花火が、つい頭の上の山々を飛び廻っているのです