Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
なんぼくのとうかいどうよつやかいだん
南北の東海道四谷怪談
田中 貢太郎
Read 南北の東海道四谷怪談 (なんぼくのとうかいどうよつやかいだん) by 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 16,555 characters · 34 screens
お岩は帯を解き、襦袢一枚になって、泣く泣く其の衣服を伊右衛門の前へさし出した。伊右衛門はそれをひったくるようにした。
「これだけじゃ、しょうがない。そうじゃ、蚊帳がある」
お岩はあきれた。
「其の蚊帳を持って往かれては、坊やが」
「我鬼なんかどうでもいい、蚊がくうなら、親のやくめじゃ、追ってやれ」
伊右衛門はさっさと蚊帳をはずして、泣きしずむお岩を尻眼にかけて出て往った。
六
お岩は苦しい体をひきずるようにして、台所から亀裂の入った火鉢を出して来た。そして、それに蚊遣りをしかけながら宅悦を見た。
「いくらなんでも、あんまりじゃないか、こんなに蚊がいるのに」
宅悦はお岩の鬼魅のわるい顔を避けながらもじもじしていた。
「ひどいことをするものだ、男のわしでさえ愛憎がつきた。もし、お岩さん、あんな薄情な男と、何時までいっしょにいねえで、いっそわたしと」
宅悦はお岩の手を執って引き寄せた。お岩は驚いて其の手を揮り払った。
「あれ滅相な、其の方は、まあ武士の女房に」
宅悦はいやしい笑いかたをした。
「いくら、おまえさまばかりが操をたてても、伊右衛門さまの心は、とうから変っております。