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なんぼくのとうかいどうよつやかいだん

南北の東海道四谷怪談

田中 貢太郎

Read 南北の東海道四谷怪談 (なんぼくのとうかいどうよつやかいだん) by 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 16,555 characters · 34 screens

Aozora Bunko

「これでもか、これでもか」

惨忍な直助は庄三郎を斬りさいなんだ。

「これでいい、これでいい」

直助は思いだして出刃を傍の垣根の中へ投げすてた。と、跫音がいりみだれて駈けだして来る者があった。直助はあわてて傍へ身を隠した。それは四谷左門と伊右衛門の二人が、斬りあいながら来たところであった。伊右衛門は途中で左門に逢ったので、お岩を返してくれと頼んだが、左門が承知しないので左門を殺そうとしていた。

「おのれ、老ぼれ」

「おのれ、悪人」

左門は斬られて血みどろになっていた。伊右衛門が追いすがってまた一刀をあびせた。左門は倒れてしまった。伊右衛門はそれに止めをさした。

「強情ぬかした老ぼれめ、刀の錆は自業自得だ」

其の時傍の闇から直助が顔を出した。

「そう云う声は、たしかに民谷さん」

伊右衛門は直助の方をきっと見た。

「奥田の小厮の直助か、どうして此処へ」

其の時向うの方で下駄の音がした。伊右衛門と直助は祠の後へ隠れた。下駄の音は近よって来た。それは糸盾を抱えた辻君姿の壮い女であった。

「こんな遅くまで、父さんは何をしていらっしゃることやら」

小提燈を点けた女が走って来たが、よほどあわてていると見えて、辻君姿の女にどたりと突きあたった。