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なんちしんじゅう
南地心中
泉 鏡花
Read 南地心中 (なんちしんじゅう) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 39,205 characters · 79 screens
「時に、それについて、」
「あの、別嬪の事でしょう。私たちが立停まって、お城を見ていました。四五間さきの所に、美しく立って、同じ方を視めていた、あれでしょう。……貴方が(今のは!)ッて一件は。それ、奴を一人、お供に連れて、」
「奴を……十五六の小間使だぜ。」
「当地じゃ、奴ッてそう言います。島田髷に白丈長をピンと刎ねた、小凜々しい。お約束でね、御寮人には附きものの小女ですよ。あれで御寮人の髷が、元禄だった日にゃ、菱川師宣えがく、というんですね。
何だろう、とお尋ねなさるのは承知の上でさ、……また、今のを御覧なすって、お聞きなさらないじゃ、大阪が怨みます。」
「人が悪いな、この人は。それまで心得ていて、はぐらかすんだから。(大阪城でございます、)はちと癪だろうじゃないか。」
「はははは。」
「しかし縁のない事はない。そうして、熟とあの、煙の中の凄い櫓を視めていると、どうだろう。
四五間前に、上品な絵の具の薄彩色で、彳んでいた、今の、その美人の姿だがね、……淀川の流れに引かれた、私の目のせいなんだろう。すッと向うに浮いて行って、遠くの、あの、城の壁の、矢狭間とも思う窓から、顔を出して、こっちを覗いた。