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なんちしんじゅう
南地心中
泉 鏡花
Read 南地心中 (なんちしんじゅう) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 39,205 characters · 79 screens
おお、それなりで、貴方たちを、私が方へ、無理に連れもうて来てしもうたが、うっかりしたな、お爺はんは、今夜は私の市女笠持って附いてもらうよって、それも留守。あの、猿はどうしたやろな。」
「はい、」
と娘が引取った、我が身の姿と、この場の光景、踊のさらいに台辞を云うよう、細く透る、が声震えて、
「お爺さんが留守の時も、あの、戸を閉めた中に居て、ような、いつも留守してくれますのえ。」
二十二
「飼主とは申しましても、かえって私の方が養われました、あの、猿でさえ、……」
多一は片手に胸を圧えて、
「御寮人様は申すまでもござりません、大道からお拾い下さりました。……また旦那様の目を盗みまして、私は実に、畜生にも劣りました、……」
「何や……怪我に貴方は何やかて、美津さんは天人や、その人の夫やもの。まあ、二人して装束をお見やす、雛を並べたようやないか。
けどな、多一さん、貴下な、九太夫やったり、そのな、額の疵で、床下から出やはった処は仁木どすせ。沢山忠義な家来ではどちらやかてなさそうな。」
と軽口に、奥もなく云うて退けたが、ほんのりと潤みのある、瞼に淡く影が映した。