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なんちしんじゅう
南地心中
泉 鏡花
Read 南地心中 (なんちしんじゅう) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 39,205 characters · 79 screens
」
四
男衆の浮かせ調子を、初阪はなぜか沈んで聞く。……
「まったくそりゃ悚然としたよ。ひとりでに、あの姿が、城の中へふいと入って、向直って、こっちを見るらしい気がした時は。
黒い煙も、お珊さんか、……その人のために空に被さったように思って。
天満の鉄橋は、瀬多の長橋ではないけれども、美濃へ帰る旅人に、怪しい手箱を託けたり、俵藤太に加勢を頼んだりする人に似たように思ったのだね。
由来、橋の上で出会う綺麗な婦は、すべて凄いとしてある。――
が、場所によるね……昨夜、隣桟敷で見た時は、同じその人だけれど、今思うと、まるで、違った婦さ。……君も関東ものだから遠慮なく云うが、阪地の婦はなぜだろう、生きてるのか、死んでるのか、血というものがあるのか知らん、と近所に居るのも可厭なくらい、酷く、さました事があったんだから……」
「へい、何がございました。やたらに何か食べたんですかい。」
「何、詰らんことを……そうじゃない。余りと言えば見苦しいほど、大入芝居の桟敷だというのに、旦那かね、その連の男に、好三昧にされてたからさ。」
「そこは妾ものの悲しさですかね。