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ふるむじな

古狢

泉 鏡花

Read 古狢 (ふるむじな) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 19,891 characters · 40 screens

Aozora Bunko

その形、……その姿で。……お町さんとかも、褄端折をおろさずに。――お藻代も、道芝の露に裳を引揚げたというのであるから。

一体黒い外套氏が、いい年をした癖に、悪く色気があって、今しがた明保野の娘が、お藻代の白い手に怯えて取縋った時は、内々で、一抱き柔かな胸を抱込んだろう。……ばかりでない。はじめ、連立って、ここへ庭樹の多い士族町を通る間に――その昔、江戸護持院ヶ原の野仏だった地蔵様が、負われて行こう……と朧夜にニコリと笑って申されたを、通りがかった当藩三百石、究竟の勇士が、そのまま中仙道北陸道を負い通いて帰国した、と言伝えて、その負さりたもうた腹部の中窪みな、御丈、丈余の地蔵尊を、古邸の門内に安置して、花筒に花、手水鉢に柄杓を備えたのを、お町が手つぎに案内すると、外套氏が懐しそうに拝んだのを、嬉しがって、感心して、こん度は切殺された、城のお妾さん――のその姿で、縁切り神さんが、向うの森の祠にあるから一所に行こうと、興に乗じた時……何といった、外套氏。――「縁切り神様は、いやだよ、二人して。」は、苦々しい。

だから、ちょっとこの子をこう借りた工合に、ここで道行きの道具がわりに使われても、憾みはあるまい。