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ふるむじな

古狢

泉 鏡花

Read 古狢 (ふるむじな) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 19,891 characters · 40 screens

Aozora Bunko

(いや、熱い湯だ。……時々こんな事がある。飲過ぎたと見えて寒気がする。)……これが襖越しのやりとりよ。……

私?……私は毎朝のように、お山の妙見様へお参りに。おっかさんは、まだ寝床に居たんです。台所の薬鑵にぐらぐら沸ったのを、銀の湯沸に移して、塗盆で持って上って、(御免遊ばせ。)中庭の青葉が、緑の霞に光って、さし込む裡に、いまの、その姿でしょう。――馴れない人だから、帯も、扱帯も、羽衣でもったように、ひき乱れて、それも男の手で脱がされたのが分ります。――薄い朱鷺色、雪輪なんですもの、どこが乳だか、長襦袢だか。――六畳だし……お藻代さんの顔の前、枕まではゆきにくい。お信が、ぼうとなって、入口に立ちますとね、(そこへ。)と名古屋の客がおっしゃる。……それなりに敷蒲団の裾へ置いて来たそうですが。」

外套氏は肩をすくめた。思わず危険を予感した。

「名古屋の客が起上りしな、手を伸ばして、盆ごと取って、枕頭へ宙を引くトタンに塗盆を辷ったんです。まるで、黒雲の中から白い猪が火を噴いて飛蒐る勢で、お藻代さんの、恍惚したその寝顔へ、蓋も飛んで、仰向けに、熱湯が、血ですか、蒼い鬼火でしょうか、玉をやけば紫でしょうか……ばっと煮えた湯気が立ったでしょう。