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うもんとりものちょう
右門捕物帖(一)
佐々木 味津三
Read 右門捕物帖(一) (うもんとりものちょう) by 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 220,431 characters · 428 screens
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すなわち、第一は、もう三十近いのに、どうしたことかまだ独身であること。第二は、非常に繁盛する店であること。――これは当然そうあるべきで、女に縁の深い糸屋の若い主人がまだひとり者で、あのとおりの美男子としたら、たとえはすっぱな女でなくとも、顔を拝まれるのが功徳と思って、いらない糸まで買いに行くのは理の当然なんだから、繁盛するなといったって繁盛するのはあたりまえなことですが、だからいたって金回りのよいこと。金回りがよいから勢いまた金放れもきれいになるというもので、したがって町内一統の者からも、日ごろたいへんなほめ者であったという数条だけでした。
とすると、他人から毒殺されるほどにも恨みをうけるはずはないわけなんだから、自然ここで、右門の見込み捜査は一頓挫をきたすべきでしたが、しかし、いったん手を染めたとならば、毎度申しあげたように、そんなことでおめおめとたたらを踏む右門とは右門が違います。早くもかれは、明皎々とさえ渡りたること玻璃鏡のごとき心の面に、糸屋の主人が独身であったという一条と、女の客が多すぎたという一条との二つに不審をおぼえたものでしたから、一瞬のうちにかれ一流の方法を案出いたしまして、突然伝六の意表をつきました。