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うもんとりものちょう
右門捕物帖(一)
佐々木 味津三
Read 右門捕物帖(一) (うもんとりものちょう) by 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 220,431 characters · 428 screens
大きにご苦労でござんした。へえい。さ、ご自由に――」
ひどく鉄火なことばつきで、わるびれもせずにのっそりと、白いふくらはぎを見せながら上がってきたものは、三十がらみの、見るからに油ぎった中年増でありました。しかし、異様なのはその髪の形で、ざんばらとした洗い髪なのです。それから白衣――。
だから右門はすかさずにいいました。
「幽霊のまねして、この大いちょうにでもぶらさがるつもりだったんだな」
女は答えるかわりにやや凄艶な顔つきで、にたにたと笑いました。
そのとき、じゃんじゃんと鳴り渡るすり半とともに、どやどやと駆けつけてきたものは、江戸の名物火事ときいて鳶の装束の一隊でありました。とみると、右門は頭に向かって凛といったものです。
「八丁堀の近藤右門じゃ。にせ金使いの一味をめしとるために、わざわざ放った火じゃによって、消すには及ばぬ。ただしかし、近所へ迷惑かけてはならんからな、飛び火だけは気をつけるがよいぞ」
言いすてると、急に気の強くなった伝六になわじりをとらして、さっそうとしながら引き揚げてまいりました。お白州へかけるまでもなく、一団は右門のいったとおりのにせ金使いで、のみならず火にかけたあの一軒家こそは、それなる一味の巣窟であったばかりではなく、にせ金を鋳造していた場所だったのです。