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うもんとりものちょう
右門捕物帖(一)
佐々木 味津三
Read 右門捕物帖(一) (うもんとりものちょう) by 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 220,431 characters · 428 screens
しかるに、おかしなことには、きょうそのお旗本のだんながこっそりお奉行所へやって来て、直接お奉行さまに会ったうえで、身分がらにかかわるんだから、事件のことも、探索のことも、ごく内密にしてくれろといったんだそうでがすよ」
「え? そりゃほんとうか」
「ほんとうともほんとうとも、そこは蛇の道ゃなんとやらで、すっかりかぎ出しちまったんですがね。だもんだから、お奉行さまも、ではだれか腕っこきの者にでもごく内密にやらせましょう、っていってるところへ、運よく行き合わしたのがあばたのあのだんななんです。だから、先生すっかりおどり上がって、今度こそはという意気込みで、自分からそれを買って出たという寸法なんですよ」
聞き終わると同時に眼をとじてしばらく黙々と考えていましたが、まもなく右門の口からは、りんとして強い一語が放たれました。
「よしッ、そうと聞きゃ男の意地だ! 勝つか負けるか、功名を争ってやろうよ」
決心したとなれば、まことにはやきこと風のごとし――もう、かれの足は真昼中の往来を小急ぎに歩きつづけていたのでした。行く先はいうまでもなく番町の旗本小田切久之進方――目的は、これまたいうまでもないこと、どこからどういうふうに探索の手を下すにしても、まず小田切その人に当たる必要があったからです。