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うもんとりものちょう
右門捕物帖(一)
佐々木 味津三
Read 右門捕物帖(一) (うもんとりものちょう) by 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 220,431 characters · 428 screens
「え? だんなにゃまったくあきれちまいますね。やぶからぼうに変なことおっしゃって、何がいったいどうなったっていうんです?」
わからない場合には、江戸じゅうの将棋さしをかたっぱし洗えといったんですから、伝六がめんくらったのも、無理もないでしょう。しかし、右門のことばには確信がありました。
「文句はあとでいいから、早くしろい!」
「だって、だんな、江戸じゅうの将棋さしを調べる段になると、ちっとやそっとの人数じゃごわせんぜ。有段者だけでも五十人や百人じゃききますまいからね」
「だから、先に凌英っていう彫り師に当たってみろといってるんじゃねえか」
「じゃ、三月かかっても、半年かかってもいいんですね」
「バカ! きょうから三日以内にあげちまえ!」
「だって、江戸を回るだけでも三里四方はありますぜ」
「うるせえやつだな。回りきれねえと思ったら、駕籠で飛ばしゃいいんじゃねえか」
「ちえっ、ありがてえ! おい、駕籠屋!」
官費と聞いて喜びながら、ちょうどそこへ来合わしたつじ駕籠を呼びとめてひらり伝六が飛び乗ったので、右門はただちに数奇屋橋の奉行所へやって行きました。もちろん、奉行所ももうそのときは色めきたって、非番の面々までがどやどやと詰めかけながら、いずれもが長助殺しの犯人捜査に夢中でありました。