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うもんとりものちょう
右門捕物帖(三)
佐々木 味津三
Read 右門捕物帖(三) (うもんとりものちょう) by 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 241,558 characters · 480 screens
――名人の面はしだいに青ざめて、しだいに困惑の色が深まりました。竹刀だこの当たっているほど武道熱心な者が、見るとおり両刀は腰にしたままで、鯉口さえ切るひまもなくあっさりやられているところを見ると、この下手人はじつに容易ならぬ腕ききにちがいなかったからです。加うるに、突いたのでもない、刺したのでもない、切ったのでもないとすれば、いかなる凶器でえぐったか、それがまず第一のなぞです。
「ね、ちょいと。誉れのたけえあごなんだ。あごをなでなせえよ、あごをね。そろりそろりとなでていきゃ、じきにぱんぱんと眼がつくじゃござんせんか。なでなせえよ、かまわねえんだから。ね、ちょいと。遠慮なくおやりなせえよ。え? だんな! 聞こえねえんですかい」
うるさいやつがうるさくいうのを黙々と聞き流しながら、名人はぬっと手を入れてその懐中をしらべました。もし、懐中物でも紛失していたら、またそこに目のつけようもあったからです。――だが、紙入れはある。物取り強盗、かすめ取りのつじ切りでもないとみえて、小判が五枚と小粒銀が七、八ツ、とらの子のようにしまわれている紙入れがちゃんとあるのです。