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うもんとりものちょう

右門捕物帖(三)

佐々木 味津三

Read 右門捕物帖(三) (うもんとりものちょう) by 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 241,558 characters · 480 screens

Aozora Bunko

にらめながら、霊験あらたかな名物あごを、思い出したようになでてはさすり、さすってはなでつつ一心不乱に考えだしました。

しかも、それが一刻や二刻ではないのです。寝もやらず、食事もとらず、新しい朝がやって来ても秋日の晴れた昼がやって来ても、そうしてやがてまた日が落ちかかっても、ひとつところにじっと端座したまま、身じろぎもせずにしんしん黙々と考えつづけたままでした。伝六またしかり。しゃべりたくて、鳴りたくて、たたきたくてたまらないのを必死にこらえながら、ちょこなんとへやのすみにちぢまって、小さく置き物のようにすわったままでした。――だが、とっぷり暮れて、宵五ツの鐘が遠くに消えていったせつな!

「いったッ。いったッ。伝公ッ、とうとうあごがものをいったぜ」

「てッ。ありがてえ! ありがてえ! ち、ちくしょうめッ――。は、腹が急にどさりと減りやがった。も、ものもろくにいえねえんです。なんていいましたえ。あごはなんていいましたえ」

「武鑑をしらべろといったよ」

「え……?」

「武鑑をおしらべあそばせと、やさしくいったのよ。わからねえのかい」

「はあてね。いちんち一晩寝もせず考えたにしちゃ、ちっと調べ物がおかしな品だが、いったいなんのことですかい」