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うもんとりものちょう
右門捕物帖(三)
佐々木 味津三
Read 右門捕物帖(三) (うもんとりものちょう) by 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 241,558 characters · 480 screens
この数がざっと三百八十名ばかり。いずれもこの日は大紋風折烏帽子の式服に威儀を正して、お乗り物は一様に長柄のお駕籠、これらのものものしい大小名が規定どおりの供人に警固されて、三位、中将、納言、朝散太夫と位階格式禄高の順もなく、入れ替わり立ち替わり陸続としてひっきりなしにお参りするのですから、その騒々しさ混雑というものは、じつに名状しがたいくらいでした。しかも、これがただお参りするのではないからかなわないのです。行きと帰りと絶え間なく続くそのお召し駕籠が、途中すれ違ったとなると、
「酒井大和守様ア――」
「土屋相模守様ア――」
といったぐあいに、いちいち名のりをあげて、いちいちまたたれをあげながら、お大名どうし双方ごあいさつ会釈をかわさねばならぬしきたりになっているため、ややこしさ、ぎょうぎょうしさ、もしも気短者の伝六が万石城持ちの相模守にでもなっていようものなら、さぞかし、べらぼうめ、じれってえや、の巻き舌啖呵が絶え間なくお乗り物から飛び出したにちがいないほどの煩わしさでした。
そのうえに見物は町々屋並みを埋めるばかり、将軍家還御になってしまうと、道に張られていた引きなわはいっせいにもう取りのけられて、見物かってのお許しになっているため、雪にもめげずに押し寄せた有象無象が、押すな押すなの大混雑です。