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うもんとりものちょう
右門捕物帖(三)
佐々木 味津三
Read 右門捕物帖(三) (うもんとりものちょう) by 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 241,558 characters · 480 screens
二三春とかが自身このおれに頼みに来たら、おれのあごだって油が乗ってくるんだ。油が乗りゃ、おのずと気もへえって眼もつくじゃねえか。これからもあるこったから気をつけろ」
「暑っくるしいやつだな。四の五のいっている暇があったら、はええところ長いのを持ってきな」
「え……?」
「のぼせるな、大小をはよう持参せい」
お組屋敷へ飛ばしておくと、名人は静かに小さい男を顧みてきき尋ねました。
「嵐三左衛門とかいう上方役者は、今どこに泊まっているんだ」
「ゆうべはたしか浜町河岸の栗木屋っていう水茶屋に宿をとっていたはずでござんす」
「じゃ、幽霊水はゆうべも出たんだな」
「出たとのうわさを聞いたればこそ、こうしてお詮議のおねげえに参ったんでござんす」
「おまえのうちはどこじゃ」
「駒形河岸の妹のところにいるんでござんす」
「じゃ、道のついでだ、栗木屋のほうを洗って眼がついたら、吉左右しらせに寄ってやるから、帰って待っていな」
えいほうと、伝六ともども御用駕籠をそろえながら飛ばしていったのは、浜町河岸のその栗木屋です。――さすがのおひざもと大江戸も、真夏の酷暑に物みなすべてが焼けついて、かげろう燃える町中は、行き来の人も跡を断ち、水い、水い、と細く呼ぶ水売りの声のみがわずかに涼味をそそるばかりでした。