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どうきょにんかふう

同居人荷風

小西 茂也

Read 同居人荷風 (どうきょにんかふう) by 小西 茂也 (こにししげや) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 8,026 characters · 17 screens

Aozora Bunko

(鏡花の場合もしかり)

九月三日。霞ヶ関書房より天皇への公開状執筆依頼あり。先生苦笑、余適当に断わる。先生は「天子さま」と天皇のことを常に云う。これも明治生れのためならん。夕方、先生座敷の中に七輪を持込み、障子を締切って火を熾す。障子煙※(「陷のつくり+炎」、第3水準1-87-64)となる。あまりに危険ゆえ五歳の長女をして「先生、火事ですか」といわしめたるところ、「ハイ、ハイ、火事ですよ」と平気で雑誌類を燃やしつづけおりたり。

九月六日。先生近頃泥棒恐怖症にて外出していても何か盗まれはせぬかと、急いで戻ってくるよし、隣室の者語れり。谷崎氏より書面にて巷間先生の神経衰弱の噂高しとて心配し、一度先生の上洛を促し、あわせて「細雪」の書評を頼み来りたりと。

九月七日。市川署刑事来り本泥棒の件につき先生と対談。先生O家を正式に訴え出でたるなり。

九月八日。先生朝八時市川警察署に行き、十一時半帰宅。刑事のなかに先生の名前が読めず「ニフウ」さんと云いし者ありと。中央公論の社員のストライキを先生大いに憂慮し、島中氏が引込むと社はつぶれ、毎月一万円中央公論社から来ていたお手当がなくなり、自分は路頭に迷うやも知れずと、本気になって心配しおりたり。