Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

めいじんじごく

名人地獄

国枝 史郎

Read 名人地獄 (めいじんじごく) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 149,286 characters · 301 screens

Aozora Bunko

の旦那も、鼠小僧にかかってはね」

「あれは別だ」と厭な顔をして「鼠小僧は私の苦手だ」

おりから同じ方角から、鼓の音が聞こえて来た。ポンポン、ポンポン、ポンポンと、堤に添って遠隔って行った。

すいかけた煙管を膝へ取り、平八老人は耳を澄ましたが、次第にその顔が顰んで来た。

梅はおおかた散りつくし、彼岸の入りは三日前、早い桜は咲こうというのに、季節違いの大雪が降り、江戸はもちろん武蔵一円、経帷子に包まれたように、真っ白になって眠っていたが、ここ小梅の里の辺りは、家もまばらに耕地ひらけ、雪景色にはもってこいであった。その地上の雪に響いて、鼓の音は冴え返るのであった。

「よく抜ける鼓だなあ」思わず平八は感嘆したが、「これは容易には忘れられぬわい。ああ本当にいい音だなあ。……しかし待てよ? あの打ち方は? これは野暮だ! 滅茶苦茶だ! それにも拘らずよい音だなあ」

ついと平八は立ち上がった。それからのそりと縁へ出た。

「さて、ご老体、出かけましょうかな」

「ナニ出かける? はてどこへ?」一閑斎は怪訝そうであった。

「刃の稲妻……」と故意と皮肉に、「消えた提灯、女の悲鳴、雪に響き渡る小鼓とあっては、こいつうっちゃっては置けませんからな」