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めいきょくけっていばん
名曲決定盤
野村 あらえびす
Read 名曲決定盤 (めいきょくけっていばん) by 野村 あらえびす (のむらあらえびす) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 344,837 characters · 680 screens
『ヴァイオリン協奏曲』(ベートーヴェン)(八〇七四―九)
『ヴァイオリン協奏曲』(メンデルスゾーン)(八〇八〇―三)
の二曲で、この出現はレコード界の驚異であり、劃時代的な出来事であった。ヴァイオリンの演奏がクライスラーであるということが、当時にあっては既に煽情的で、その上、管弦楽は伯林国立歌劇場の楽団であり、指揮は老巧レオ・ブレッヒ、使用のホールは、ジングアカデミーと、申し分のない条件を備えたものであった。
このレコードについては、私は旧著の中で極力支持し讃美している。が、もう一度当時の感激をここにくり返さなければならない。レコード音楽というものが、筋立った曲を聴かせるようになってからもはや十何年になるが、私の経験の範囲内において、ベートーヴェンの『第九』の最初のレコード以外に、これほど世界のファンたちの感激を齎したものはなかったと思う。
第一番にクライスラーの音の美しさが、この大曲を本質的に瑰麗なものにした。クライスラーの音の豊潤な美しさは、実演でバッハの『シャコンヌ』を聴いて、私は驚歎したことを記憶しているが、この人のボーイングの言うに言われぬ柔かさは、フーベルマンの名刀で鉄を切るような、じいんと刃鳴りのある凄まじさとちょうど対蹠的なもので、いずれを良しとし、いずれを悪しとするかは、銘々の好みに任せる