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めいきょくけっていばん

名曲決定盤

野村 あらえびす

Read 名曲決定盤 (めいきょくけっていばん) by 野村 あらえびす (のむらあらえびす) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 344,837 characters · 680 screens

Aozora Bunko

の項に書く)

ゲルハルトの声は万人に優れたものであった。清澄で、深沈として、驚くべき含蓄と陰影を持った声で、その上、楽曲に対する彼女一流の聡明な解釈は、ただ単に、美しく器用に歌いまくる多くの女流歌手の間に、嶄然として特異の境地を開いたものであった。少くとも三十台――四十台までのゲルハルトの驚くべき表現は、リードにおける限り、男声のスレザーク以外に肩を並べる者のなかったことは事実である。

ゲルハルトは、見事な恰幅を持った大女で、その声は必ずしも大きくないと言われている。近衛秀麿子はかつて私に「ゲルハルトが日本へ来てくれるといいですな。声量は小さいが、非常にうまい人ですよ」――そんなことを言っていられたことを記憶している。それはしかしもう十数年も昔のことで、今日のゲルハルトのことではない。

電気以前、HMVとドイツ・グラモフォンに入っている頃のゲルハルトは、その声価に比べて甚だ良いレコードではなかった。「ゲルハルトはレコードが非常に悪い」――私はそんなことを始終聞かされていた。

そのゲルハルトが電気吹込みで入ったのは一九二六、七年頃で、それから引き続き十枚以上のレコードを吹込んでいるが、録音の断然良くなったのと反比例に、一部の間には「ゲルハルト老いたり」