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あづまばし
問はずがたり・吾妻橋 他十六篇
永井 荷風
Read 問はずがたり・吾妻橋 他十六篇 (あづまばし) by 永井 荷風 (ながいかふう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 75,586 characters · 159 screens
男の二 イヤ君に出さしちゃ済まない。三百七拾円だな。ああ君。僕に払わしてくれ。(ト百円札を出す。)
おでんや ヘエ参拾円のおつり。毎度ありがとう御ざい。
ト二人の客なお暫く争いながら上手に入る。街娼鈴代。年二十位。洋装外套。ハンドバッグを提げ上手より出るとその後より汚れた作業服の職工酔いながら、
職工 姐さん。ちょいとねえさん。
ト呼びかける。鈴代一寸振返り知らぬ顔にて下手へ行きかける。
職工 一人歩きは危険だぜ。送ってッてやろう。
鈴代 いいえ。いいんですよ。家はすぐそこですから。
職工 遠慮するな。一しょに行こう。(ト手を取ろうとする。)
鈴代 何するんだよ。この人ア。
ト突き飛す。職工よろけて倒れる。鈴代おでん屋の灯を見てかけ寄り、
鈴代 おじさんおじさん。
職工 よくも人を突飛ばしたな。承知しねえぞ。
おでんや 店の邪魔だ。止しなさい。
職工 この野郎。承知しねえぞ。
ト立ちかかって見たがおでん屋の姿に、
職工 この野郎。この野郎。
ト呼びながら下手へ入る。
おでんや 馬鹿野郎。おとといお出でだ。
鈴代 おじさん。すみません。何かおいしそうな物。取って下さいな。
おでんや アイヨ。