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ぜんあくりょうめんねずみこぞう
善悪両面鼠小僧
国枝 史郎
Read 善悪両面鼠小僧 (ぜんあくりょうめんねずみこぞう) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 10,231 characters · 21 screens
その夜、浅草の料亭で、例の五人の無頼漢が、ひそひそ話しながら酒を飲んでいた。
そこへ女中に案内され、入って来たのは例の武士である。
「今日はご苦労」と云いながら金の包をヒョイと出した。
「一人前十両ずつ。へへえ、有難う存じます。仕事も随分あぶなかったが、褒美の金も値がいいや」
「それではそれで堪能か、こっちも安心」と云いながら、グイと取った深編笠、顔を見ればこれはどうだ! 水の垂れそうな美男ではなく、二眼と見られない醜男ではないか!
解けぬ謎
荒い格子に瓦家根、右の方は板流し! 程よい所に石の井戸、そうかと思うと格子の側に朝熊万金丹取次所と金看板がかかっている。所は茅場町植木店、真の江戸子が住んでいる所……で、表向きは魚屋渡世、裏へ廻ると博徒の親分、それが主人次郎吉の身分だ。力士は勿論三座の役者から四十八組の火消仲間、誰彼となく交際うので、次郎兄い次郎兄いと顔がよい。直接の乾児が五六十人、まずは立派な親分と云えよう。
雀がチウチウ烏がカアカア。それ夜が明けた戸を開けねえ。ガタン、ピシン、サーッと云うのは井戸から水を汲む音である。そこの若衆が息セキ切って河岸の買出しから帰って来る。