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はなしかのきもの
噺家の着物
三遊亭 金馬
Read 噺家の着物 (はなしかのきもの) by 三遊亭 金馬 (さんゆうていきんば) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 6,355 characters · 13 screens
であるとか奉行を主とした咄、侍の多くでる咄くらいで、ほかの咄は、袴ばかりでなく紋付の羽織も邪魔なものである。紋付の羽織は、この場合一礼のあと脱ぐものである。この羽織を脱ぐにも、何処で脱いでよいというものではない。『三人旅』で、馬の上に乗ってから、羽織を脱ぐことはできない。本題にかかる前、枕のうちに脱ぐ。
この羽織を咄の道具に使ってうまかった人に、故橋本円馬師匠がある。
『夢金』という咄で、船頭が蓑を脱ぐときに、羽織を脱いで、雪を払って脇へおく。
往来で友達と喧嘩のときに、「この野郎」といって脱ぐ。
『佃祭』で、「この着物をそっちへやっておけ」と、表から家のなかへ放りこむと、そのときいかにもお祭のお揃いの浴衣を脱いで急いでいる情景がでる。
演出効果百パーセントといいたい。羽織を脱ぐだけがひとつの芸になっている。
昔の咄家がこの羽織の裏へお金をかけたのも、見栄ばかりでない。羽織を高座で脱いでおいて咄をしている、後連(自分のあとに上る人)がくると、前座がこの羽織を引っこめる。あとのきた合図である。定連は羽織が引けたから、あとがきたなとわかる。昔素人でも、通人の間であまり話が長いと羽織を引いてやれよなんという言葉が流行した。