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しじゅうねんまえのふくろだのたき
四十年前の袋田の瀑
木暮 理太郎
Read 四十年前の袋田の瀑 (しじゅうねんまえのふくろだのたき) by 木暮 理太郎 (こぐれりたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 4,049 characters · 8 screens
そうだ、川の流れはどうあろうと瀑には関係のないことだ、行って見よう。
教えられた通り川の左岸を遡った。五、六町も田の畔を進むと両岸が急に迫って、狭い谷間に圧縮された力強い瀑の音が一度に爆発したように痛い程耳に響いて来る。もう道というものは殆どない、河の中の大石を跳び伝いて行く、雨で水量が増しているからと注意されてはいたが、実に物凄い流れだった。川が少し左に曲っている突端まで来ると、右から落下している瀑の姿が現れた。ここからは斜に望むので全容が見られない。瀑と向い合っている対岸には恰好の段がある、少し危険ではあったが、岩から岩を伝いて漸く其処に攀じ登った、瀑の真正面である。下から仰いでは二段かと思われたが、ここで見ると三段で、上段よりも中段、中段よりも下段と次第に高さを増すと共に末広がりに落ちている。二段目は中央に巨岩が蟠っていて、そこは一きわ激しく水が盛り上っていた。減水の際は此岩が露出して瀑は左右に二岐するそうである。余りに距離が近過ぎるのと幅が広いのとで其壮観に圧倒されて、暫くは高さの感じを意識しなかった。目測ほど当にならぬものはないが、恐らく二十丈は下るまい。