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きょうかいなきさべつ
境界なき差別
丘 浅次郎
Read 境界なき差別 (きょうかいなきさべつ) by 丘 浅次郎 (おかあさじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 8,992 characters · 18 screens
からあったもののごとくに思う癖が生じて、終には物と物との間にはかならず境界があると考えねば合点ができぬようになるとみえる。言葉と言葉との間の境界は畢竟行政上の区画のごときもので、整理の必要からいえば、是非ともどこかに定めねばならぬが、実物の方にはこれに相当する真の境界のないことをつねに忘れてはならぬ。土地の表面にはただ山川、高低があるだけで、何の境もない所へ、行政上の必要から、県の境、郡の境、町の境、村の境を設けるごとくに、実物にはただ差別があるばかりで、境界のない所へ、若干の言葉を割り振り、その間に縦横に繩を張って、一々の言葉の領分を定めたに過ぎぬが、実物を離れて、言葉のみを用いていると、繩張りのみに目が付いて、実物の方にもそこに判然たる境界があるかのごとくに思い込む癖が生じたのであろう。
また人間は指をもって物の数を算え、数に一二三四五とおのおの名称を付け、十は五の二倍、四は八の二分の一というように勘定し、長さ、広さ、重さをいい現わそうとするにあたっては、まず単位を定めて、その何倍とか、何分のいくつとかいう言葉を用いる。長さならば、里町間とか、丈尺寸とかいう単位を設け、何里の道とか、何尺の紐とかいうているが、一本の紐を見て、目分量でその長さを測るときには頭の中で、その紐を一尺ずつに境を付けて考える。