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だんのうらのおにび
壇ノ浦の鬼火
下村 千秋
Read 壇ノ浦の鬼火 (だんのうらのおにび) by 下村 千秋 (しもむらちあき) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 7,170 characters · 15 screens
寺の坊さんは、びしょぬれになっている法師の着物をきかえさせ、あたたかいものを食べさせて、できるだけ心をおちつかせました。なにかに心をうばわれたようになっていた法師は、そこでようやくわれにかえりました。そして、お坊さんや寺男が、じぶんのために、どんなに心配をし、骨をおったかをしり、たいへんすまないように思い、そこで、なにもかも、お坊さんにうちあけてしまいました。
お坊さんはそれをきくと、
「法一さん、それは、おまえのふしぎなほどに、たくみなびわの腕まえが、おまえをそういうところへみちびいたのじゃ。芸ごとの奥に達すると、そういうことがあるもので、これはおまえの芸道のためには、よろこばしいことじゃが、しかし、あぶないところじゃった。昨夜、おまえは平家の墓場の前で、雨にぬれて、すわっていたそうじゃ。おまえは、なにかまぼろしを見て、そうしていたのじゃろうが、いつまでも、そうしていたら、平家の亡者の中へひきこまれ、ついには八つざきにされてしまうところじゃった。もう、どこへもいってはならぬぞ。わしは、今夜も法事で、るすをするが、おまえが使いのものに、つれていかれないように、今夜は、おまえのからだを、よくまもっておかねばならぬわい。