Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

だんのうらのおにび

壇ノ浦の鬼火

下村 千秋

Read 壇ノ浦の鬼火 (だんのうらのおにび) by 下村 千秋 (しもむらちあき) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 7,170 characters · 15 screens

Aozora Bunko

が、法師はかたく口をむすんでいました。

「法一。……こりゃへんじがないぞ。いないのか。」

と、武士は、えんがわへよって来ました。

「おや、ここにびわだけある。が、法一はいない。へんじのないのもむりはない。が、耳だけがあるぞ。使いに来たしょうこに、これを持っていこう。」

こう武士はつぶやくと、法師のりょう耳は、いきなり鉄棒のような指先で、ひきちぎられました。けれど法師は、声もだせませんでした。

武士は、それでいってしまいました。

夜がふけて、お坊さんは帰って来ました。そして法師が、りょう耳から流れでる血の中にすわっているのを見つけました。

しかし法師は身動きひとつせず、きちんとすわっています。お坊さんは、びっくりしながら、

「法一、このありさまはどうしたのじゃ?」

と、さけびました。法師はそこで、はじめてわれにかえり、今夜のできごとを話しました。

「ああ、そうじゃったか。いや、それはわしの手落ちじゃった。おまえの耳ばかりへは、経文を書くのを忘れたのじゃ。これはあいすまぬ。が、できたことはしかたがない。このうえは、早く傷をなおすことじゃ。それだけのさいなんで、命びろいをしたと思えば、あきらめがつく。