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なつのそうれつ

夏の葬列

山川 方夫

Read 夏の葬列 (なつのそうれつ) by 山川 方夫 (やまかわまさお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 60,161 characters · 122 screens

Aozora Bunko

「寒いな。風がすごくつめたい」

「うん、寒いな」

答えて、やっとぼくは山口に目だけを向けた。山口の鼻は、寒さのためすこし赤く染まっていた。――と、彼がいった。

「……こうしてみると、地上って、ほんとに魅力ねえなあ」

なるほど、たしかにぼくらの見ているのは「地上」なのだ――抽象的なそんな言葉での会話が、ごく自然な位置だという発見にぼくは有頂天になった。

「地上」は、苔むしたようなすすけた緑の斑点を、校舎の裏の赤土の上にひろげ、ところどころ地面に凸凹の影をつくりながら、眼下から渋谷川のほうにかけて裸の空地をつづけている。さらにそのむこうには瓦礫の焼跡が焦土のあとを見せて、遠くからカブト虫のような車や都電が近づき、まばらに疲れた足どりで指人形ほどの人間が、のろのろと歩いていた。

「まったくだな。魅力ねえなあ」

「人間って、どうしてこんな地上の生活を愛せるんだろう。……愛せるやつなんて、よっぽど幸福なバカだと思うね」

「まったくだ。ぼくはあんな地上を軽蔑する」

「フン。……とび下りてやろうか」

「とび下りて大地に抱きつこうってのか。ぼくは、それほどの執着なんて、まったくこの下界にはかんじないね」