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よるのこうず
夜の構図
織田 作之助
Read 夜の構図 (よるのこうず) by 織田 作之助 (おださくのすけ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 62,068 characters · 125 screens
そんな時女が可哀相でならないのだ。女を苦しめているのが結局自分でありながら、苦しんでいる女を可哀相だと思うこの矛盾は一体どうしたことか。
矛盾といえば、結局女とかかわり合うことは、女を不幸にするものだと知りぬいていながら、やはり誘惑という形式でかかわり合って行くとは、ますます何としたことか。知っているだけに、一層罪が深い。
燃えられない信吉は孤独であった。その孤独に堪えかねて結局女に近づいて行く。女はそんな信吉の毒性を知らない。孤独さに惹きつけられた憂愁の表情に魅力を感ずる。
このような、なげかわしい状態は、多かれ少かれ近代人特有のものだが、いつまでつづく状態だろうか。
が、さし当って、信吉はこういうばかりであった。
「僕は結局女たらしだからね。ついて来ちゃいけない」
「それなら、なぜ、あたしを誘惑なすったの」
「だから、女たらしだといっているじゃないか」
「本当の女たらしは、そんな風に自分は女たらしだとおっしゃらないわ」
「つまり、僕がいい子になろうとしている証拠だ」
そういう言葉自体がいい子になろうとしているのだ。
「女たらしでも、いい子でも何でもいいわ――ねえ、ついて行っちゃいけない……?」