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よるのしんぐんらっぱ
夜の進軍らっぱ
小川 未明
Read 夜の進軍らっぱ (よるのしんぐんらっぱ) by 小川 未明 (おがわみめい) in Japanese with furigana. JLPT N3. Tap a word for the meaning.
N3 · intermediate · modern kanji and kana · 3,733 characters · 8 screens
それから、タ、タ、ターというらっぱのひびき、ガタン、ガタン、ゴーという戦車の走る音がしました。
そうかと思うと、兵隊さんたちが、なにか仕事をしながら、うたっている歌の声がきこえてきたのです。
勝ってくるぞと勇ましく、
誓って国を出たからは、
手柄立てずに死なりょうか、
進軍らっぱきくたびに、
まぶたに浮かぶ旗の波……。
おじいさんの目からは、涙が流れていました。「今夜は、泊まっていらっしゃい。」と、主人はしんせつにいってくれたけれど、おじいさんは、戦争にいっている息子のことを思えば、また息子と同じような兵士たちのことを思えば、体じゅうが熱くなって、これしきの寒さがなんだ。暗い道がなんだという気持ちになりました。さいわいにいい月夜だったので、主人にお礼をいって、そこを出ました。
町をはなれると、さすがに、町から村の方へいく人影は見えなかったのです。おじいさんは、独り雪道を月の明かりで、とぼとぼと歩いて帰りました。ものすごいような青みを帯びた月の光です。雪の野原は、銀のようにかがやいて見えました。そして遠くの森の影は、黒い着物をきた人が、じっとして雪の中に立っているのに似ています。