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よあけまえ
夜明け前
島崎 藤村
Read 夜明け前 (よあけまえ) by 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 205,629 characters · 408 screens
「伊之助さん、お継立ての御用米が尾州から四十八俵届きました。これは君のお父さん(金兵衛)に預かっていただきたい。」
半蔵が隣家の伊之助と共に街道に出て奔走するころには、かねて待ち受けていた御用の送り荷が順に到着するようになった。この送り荷は尾州藩の扱いで、奥筋のお泊まり宿へ送りつけるもの、その他諸色がたくさんな数に上った。日によっては三留野泊まりの人足九百人、ほかに妻籠泊まりの人足八百人が、これらの荷物について西からやって来た。
「寿平次さんも、妻籠の方で目を回しているだろうなあ。」
それを思う半蔵は、一方に美濃中津川の方で働いている友人の香蔵を思い、この際京都から帰って来ている景蔵を思い、その話をよく伊之助にした。馬籠では峠村の女馬まで狩り出して、毎日のようにやって来る送り荷の継立てをした。峠村の利三郎は牛行司ではあるが、こういう時の周旋にはなくてならない人だった。世話好きな金兵衛はもとより、問屋の九太夫、年寄役の儀助、同役の新七、同じく与次衛門、それらの長老たちから、百姓総代の組頭庄兵衛まで、ほとんど村じゅう総がかりで事に当たった。その時になって見ると、金兵衛の養子伊之助といい、九太夫の子息九郎兵衛といい、庄兵衛の子息庄助といい、実際に働けるものはもはや若手の方に多かった。