Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
よあけまえ
夜明け前
島崎 藤村
Read 夜明け前 (よあけまえ) by 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 205,629 characters · 408 screens
それには、伏見屋の仏事にも弟子を代理として差し出すという詫びからはじめて、こんな非常時には自分のようなものでも村の役に立ちたいと思い、行脚の旅にあるころからそのことを心がけて帰って来たが、あいにくと病に臥していてそれのできないのが残念だという意味を書いてある。寺でも経堂その他の壁は落ち、土蔵にもエミ(亀裂)を生じたが、おかげで一人の怪我もなくて済んだと書いてある。本陣の主人へもよろしくと書いてある。
「いや、和尚さまもお堅い、お堅い。」
「なにしろ六年も行脚に出ていた人ですから、旅の疲れぐらいは出ましょうよ。」
それが吉左衛門の返事だった。
「お宅では。」
「まだみんな裏の竹藪です。ちょっと、おまんにもあってやってください。」
そう言って吉左衛門が金兵衛を誘って行ったところは、おそろしげに壁土の落ちた土蔵のそばだ。木小屋を裏へ通りぬけると、暗いほど茂った竹藪がある。その辺に仮小屋を造りつけ、戸板で囲って、たいせつな品だけは母屋の方から運んで来てある。そこにおまんや、お民なぞが避難していた。
「わたしはお民さんがお気の毒でならない。」と金兵衛は言った。「妻籠からお嫁にいらしって、翌年にはこの大地震なんて全くやり切れませんねえ。