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ゆめはよびかわす
夢は呼び交す
蒲原 有明
Read 夢は呼び交す (ゆめはよびかわす) by 蒲原 有明 (かんばらありあけ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 104,126 characters · 210 screens
さてそれがどこに潜んでいるかは分らない。鶴見は依然として坐ったまま黙りつづけている。そうしている間に、この日もまたいつしか暮れて、電燈が点いた。
鶴見たちが世話になっている家は、農家の常とて、表口から裏口にかけて、突き抜けていて、その空所が広い土間である。この家では、その土間の中ほどより裏口に近いところに大きな食卓を据え、その周囲に腰掛が置いてある。食事のおりにはめいめいが極まった席に順序に著く。電燈を点けることが、おおかた夕食開始の刻限になっている。
今晩も電燈が点いたので、鶴見は出居から土間に降りて、定めの椅子を引き出して腰をおろす。鶴見の席は卓の幅の狭い側面を一人で占めることになっているのである。家族の人々は老人夫婦をはじめ出揃っている。
この家の古い建築の仕方から見れば、いま食卓の据えてある土間の奥に竈が築かれていて、朝夕に赤い火が燃えていたものと推測される。厨が建増になってから、三つ続きの大きな竈もその方へ移されて、別に改良した煉瓦の竈も添わっている。内井戸も出来て、流し場も取りつけられ、すべては便利になっている。
それで電燈は、出居と囲炉裏の間との仕切の鴨居に釘を打ちつけて、その釘にコオドを引き掛けてあるのを、夕食のおりだけはずして来て、食卓を側面から照らすように仕向けるのである。