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おおとりものせんにんつぼ

大捕物仙人壺

国枝 史郎

Read 大捕物仙人壺 (おおとりものせんにんつぼ) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 47,606 characters · 97 screens

Aozora Bunko

もっともそれには理由があるので、お染の産れたその同じ日に――詳細く云えば弘化元年八月十日のことであるが、藤九郎の女房のお半というのが、やはり女の児を産んだ。ところがそれが運悪く産れた次の日にコロリと死んだ。それを悲しんで女房のお半も、すぐ引き続いて死んでしまった。さすが悪の藤九郎も、これには酷く落胆して、一時素行も修まった程であった。

ところでこのころ藤九郎は、伊丹屋の借家に棲んでいたので、よく伊丹屋へは出入りした。自然お染と顔を合わせる。子を失った親の愛が、同じ日に産れた家主の子へ、注がれるというのは当然であろう。

4

しかるにここに困ったことが出来た。

月日が経つに従って、お染の顔が父親へは似ずに、藤九郎の顔に似るのであった。

「藤九郎め、好男子だからな」

「そういえば、伊丹屋のお神さんは、莫迦に藤九郎めを贔屓にしたっけ」

「誰の種だか解りゃしねえ」

世間の人達はこう云い合った。

しかし真面目な伊丹屋の内儀が、博奕風情の藤九郎などを問題にするはずがない。それは伊右衛門も信じていた。で幸いこの事については何の事件も起こらなかった。

しかし事件はその翌年、すわなちお染の二歳の時に、別の方面から起こってきた。