Japanese reading practice

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

Read 大菩薩峠 (だいぼさつとうげ) by 中里 介山 (なかざとかいざん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 145,722 characters · 286 screens

Aozora Bunko

「いやだってば、おばさん」

「いいのよ、わたしの面をごらん」

「え」

といって茂太郎は、頬摺りをするほどさしつけたお銀様の面を見つめると、

「怖い面でしょう、わたしの面は……」

人に隠して見せまいとつとめた自分の面を、この時に限ってお銀様は、打開いて茂太郎に見せようとします。

満面が焼けただれて、白眼勝ちの眼が恨みを含んで、呪いそのもののような面をまともに見た人は、誰でもゾッとして身の毛をよだてないものはありません。しかし茂太郎は、それを怖れないでうるさがり、

「怖かありません、おばさんの面は怖くないけれども、こうやって抱かれるのが窮屈でならない、放して下さい」

「お前、ほんとうに、わたしの面を怖いとは思わない?」

お銀様は、なお、おびやかすように茂太郎の面に、呪いそのもののような自分の面を見せようとすると、

「怖かありません、あたいは人の怖がるものを怖がらないけれど、窮屈なことがいちばんきらいなのよ」

「いいえ、おばさんの面はこわい面でしょう、それにくらべるとお前の面は、綺麗な面ね」

「いいえ、怖かありません、あたい蛇だって、狼だって、何だって怖いと思ったことはないけれど、人に可愛がられるのが大嫌いさ、息が詰まるんだもの……」