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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

Read 大菩薩峠 (だいぼさつとうげ) by 中里 介山 (なかざとかいざん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 159,272 characters · 313 screens

Aozora Bunko

見るもの、聞くものに、一通りへらず口をたたかなければ納まらぬ道庵、まだ洗足の方はお留守で、往来をながめると、急ぎ足な三人連れの侍、東へ向って通るのを見て、

「はてな……時分が時分だから、大抵はこの宿で納まるのに、あの侍たちは、まだ東へ延す了簡と見える、イヤに急ぎ足で、慌てているが、ははあ、これもお差控え連だな……」

と嘲笑いました。

お大名の道中のお供の侍にはかなりの道楽者がある。道中、渋皮のむけた飯盛がいると、ついその翌朝寝過ごして、殿様はとうにお立ちになってしまったと聞いて、大慌てに慌てて、あとを追いかけるけれども、三日も追いつけぬことのあるのは珍しくない。その時は別におとがめも受けないが、国表へつくと早速「差控え」を食うことになっている。図々しいのになると、差控えの五犯も六犯も重ねて平気な奴がある。

今し、泊るべき時分にも泊らず、行手を急ぐ三人連れの侍は、多分、そのお差控え連に相違あるまいと、それを見かけて道庵が嘲笑いました。

人のことを、嘲笑う暇に、自分の足でも洗ったらよかろうに、宿でも呆れているのをいいことに、道庵は、

「ザマあ見やがれ、お差控えの御連中様……あは、は、は、は……」