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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

Read 大菩薩峠 (だいぼさつとうげ) by 中里 介山 (なかざとかいざん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 254,021 characters · 495 screens

Aozora Bunko

「ウヘヘ、土方隊長様」

「これは、沖田先生」

「永倉先生――」

お角以外の居合わせたものは、みな土下座をきってしまいました。

お角は、特別に、この人たちに土下座をきらなければならぬ理由を発見しません。そうかといって、人が畏れ敬うものは、相当に会釈をしなければならないと思いましたから、土下座こそきらないが、相当に畏れ敬う素振りを示して、少々出立を控えておりました。

「どうだ、年番――来ないか、あの囮をたずねて来る奴はないか、あれを取戻そうと騒ぐ気色は見えないか」

とたずねたのは、永倉新八でした。年番は恐れ入って、

「はい、どなた様も……まだ、一向」

「そうか、今日で三日になる、もう取片づけてよろしい」

「はい、畏まりました」

「このお方が、土方先生だ」

と言って、隊長を指して役々に永倉新八が紹介すると、

「ウヘヘヘヘ」

と言って、一同が拝伏してしまいました。

新撰組の隊長、鬼といわれる近藤勇が片腕、というより、骨肉というべき土方歳三が出向いて来たのだ。一同が恐れ入ったうちに、お角さんが、土方とはどんな男だか見てやりたい!

おや、思いの外いい男だねえ、色が白くて、優形で、なかなか好い男だ、新撰組というから、鬼からお釣を取るような男ばっかりだと思っていたのに、ホンに人は見かけによらないものだねえ。