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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

Read 大菩薩峠 (だいぼさつとうげ) by 中里 介山 (なかざとかいざん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 254,021 characters · 495 screens

Aozora Bunko

「おやおや、これは大変、甲州の大旦那がおいでになったんだよ」

甲州の大旦那とは、お銀様の父、藤原の伊太夫のことであります。

百八十二

宇治山田の米友は、当人の望みに任せて、弁信法師をひとり多景島に残して置いて、小舟をもとの長浜へ向けて漕ぎ戻しました。

その帰る路すがら、米友は、世間にはずいぶん変った小坊主もあればあるものだと思いました。御当人自身が、かなり変った人間であることを棚に置いて、弁信というものの存在が、いかにも奇妙に感ぜられてたまらないのです。

しかし、米友が、弁信を竹生島へ導こうとして、誤って多景島へ漕ぎつけてしまったのは、もともと一片の義侠心といったようなものからの出発で、本来の目的でも、予定の行動でもありませんでした。

この男、本来の道程としては、道庵先生のお供兼用心棒として、江戸から中仙道を木曾にとって、上方のぼりをして、ここまで来たというのが本筋なのでありました。それが関ヶ原まで来て、お銀様のために無心され、道庵先生も退引ならず、この唯一無二の用心棒を割愛して、お銀様の所望に任せたという次第ですが、道庵先生としても、米友を失うと同時に、お角さんを得まして、お角親方一行と、これから上方筋を同行することにして、お角は上の如く大津に宿って、わざわざ八景めぐりをしながら、胆吹