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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
Read 大菩薩峠 (だいぼさつとうげ) by 中里 介山 (なかざとかいざん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 30,484 characters · 60 screens
「そりゃ、知ってるといえば知ってるがね、そう言ってわっしにおたずねなさる、お前様はどなただね」
「わしは――あの男の身性を知りたいんでして」
「あの男の身性を知りたければ、係り役人にお聞きなせえな、そうでなければ、直接、御当人に聞いてみなせえ」
「お役人は恐いでしてね。あの御当人は、根っから口を割らねえんだそうでござんしてな。ところで、あんたはんは、どうやらあの『晒し』の身性を御存じらしい、ぜひ、教えていただきてえ」
全く、その千草股引は、この旅の男を逃がすまいと畳みかけて問いかけるのを、こちらは非常に迷惑がり、
「お上役人も当人も知らねえものを、こっちが知るかなあ。ただ、ちょっと、見たようなことがあるような気がしただけなんだ、何も知りゃあしねえよ、先を急ぐから、まあ、このくらいで御免なせえ」
旅の男は、もう全く逃げ足で走り出そうとする。つまり、一時の昂奮から、心にもないことを口走ったことを悔い、こんなことから、変なかかわり合いになってはつまらない――と、素早くこの場を外してしまおうとするものごしでした。それと見て取った千草股引が、急に権高くなって、やにわに飛びかかって参りました。