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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
Read 大菩薩峠 (だいぼさつとうげ) by 中里 介山 (なかざとかいざん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 178,374 characters · 345 screens
岩倉三位にも、中御門中納言にも、いっこう用向きのない人、せっかくこの岩倉谷に入って、がんりきの百や、米友のあとを受けて、夜興行の一芝居を見せるかと思えば、何の、岩倉村はホンの素通り。
一見はやめる者のような疲れで、身を杖に持たせてホッと息をきってみたが、未練気もなく思いきって、すっくすっくと歩み出し、八瀬大原の奥まで、まっしぐらに、或いはふらりふらりと侵入して行くもののようであります。
今晩はドチラへ、はい、大原の寂光院に美しい尼さんがいると聞いたから、それを訪ねてみたいのです。そうか、その美しい尼さんがいたらどうする、いなかったらどうする、どうもこうもありはしない、ただ六道輪廻の道筋をたずねてみたいばっかりだ、と答えれば、まず上出来の方である。
ともかくも、こうして、あっけなく岩倉村を素通りした机竜之助は、敦賀街道を北に向って進み行くと、行手の山の峡から、人が一個出て来ました。万籟静まり返った比叡と鞍馬の山ふところ、いずこからともなく、人が一個出て来た、その物音で、足をとどめてその気配に耳を傾けました。眼を以て見るのではない、耳によって見ると、左の方、瓢箪崩れの方の谷からやって来たものと覚しきが、近づくに従って、その足どりの重いことと、息をせいせいきっている調子を嗅ぐと、何やら重荷を負いつつ、歩み来る