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だいぼさつとうげ
大菩薩峠1
中里 介山
Read 大菩薩峠1 (だいぼさつとうげ) by 中里 介山 (なかざとかいざん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 200,314 characters · 398 screens
「水でよく創を洗ってやりましょう、あなた、お冷水を」
お浜は何もかも夢中で騒いでいます。ようやく水で拭き取った創のあとを洗ってやる、その間も郁太郎は苦しがって身をもがいて泣く。
「いいよ、いいよ、坊や、痛くはないよ、さあもう少し」
やっとのことで創を洗って、膏薬を貼って晒で首筋を巻きました。
「もう泣くのではありません、坊やは強いからね」
泣き止まぬ郁太郎を膝の上に、お浜自身も半ばは泣き声です。竜之助も、さすがに心配そうに郁太郎の面をながめていたが、そのうちに痛みが少しは退いたのか、または声を泣きつぶしてしまったのか、郁太郎は母の乳房を抱えたなり少し静まってきたので、
「お医者様へつれて参りましょう」
「もう遅い、明朝のことにせい」
「いけません、手後れになると大変ですから。それに、ほかの創と違って鼠に噛まれたのは、ことによれば生命にかかわると申しますから」
お浜はこの真夜中に、郁太郎をつれて医者へ往こうと主張する。
「よし、そんならわしが一走り、医者を迎えに行って来る」
竜之助が医者を迎えに行ったあとでお浜は、
「にくい畜生だ」
鼠というやつの憎さが骨身に徹って、取捉まえて噛み切ってやりたい。