Japanese reading practice

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠1

中里 介山

Read 大菩薩峠1 (だいぼさつとうげ) by 中里 介山 (なかざとかいざん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 200,314 characters · 398 screens

Aozora Bunko

「それでもよく眠っておりますものを」

「眠っていてもよいわ、抱いてみたい」

「今日に限ってそんなことを」

「いいからお貸し」

「せっかく寝たものを、起すとまたむずかりまする」

「いいから、これへ出せというに」

竜之助の言葉が強くなりますので、お浜は詮方なく、よく寝ていた郁太郎を、そっと移して竜之助に渡すと、竜之助は抱き上げて、つくづくと郁太郎の面から昨夜の創を繃帯したあたりなどを見て、今更のように、

「まあ、無事に育つがよい」

「無事に育たなくてどうするものかねえ、坊や」

「親はなくても子は育つというからな」

「両親とも立派にあるものを、縁起でもない」

お浜はやや不足顔。竜之助は思い出したように、

「浜、わしも近々京都の方へ行こうと思う」

「京都の方へ?」

お浜は意外な面。

「京都へは諸国の浪人者が集まり乱暴を致す故、その警護のためにとて腕利きの連中が乗り込んで行く、わしもそれに頼まれて」

「まあ、それはいつのこと」

「近いうち、或いは足もとから鳥の立つように」

「そうして、坊やとわたしは?」

「やはり、こっちに留守しておれ」

「いいえ、それはいけませぬ」

竜之助が不意に京都へ行くと言い出したので、お浜は驚いて、力を極めてそれに故障を申し入れる。