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だいぼさつとうげ
大菩薩峠1
中里 介山
Read 大菩薩峠1 (だいぼさつとうげ) by 中里 介山 (なかざとかいざん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 200,314 characters · 398 screens
棒を杖いた商人体の不思議な人物のみは、自分が検査役かの如き気取りで、平然としてもとの立場を動かず、そのくせ、両陣の争いはいよいよその身に近くなってきています。
壮士も、胆気一方の人ではない、術も充分である、相撲ならば四ツに組んだので、水を入れ手がない以上は、取り疲れて、死ぬまで組む。力限りの争いかと見れば、意外にも今度は、目に見えないほどずつ竜之助の太刀先が進む。進み、進むと、壮士は脂汗をタラタラと、再び中段にしてジリジリと退く。その退くこと五分なれば、竜之助の進むことも五分、一寸なれば一寸。
音もなく飛んだ刀は壮士の小鬢をかすめて、再び刃の音の立つ時、壮士は鳥の如く後ろへ飛び退る、竜之助は透さずそれを追いかける、受けて、また後ろへ飛ぶ途端に、無残や大の男は、石に躓いてと横ざまに倒れる――この時まで壮士は足駄を穿いていたものです。倒れたものを、起しも立てず拝み討ち――誰が見ても、この運命はもうきまった、倒れたのが斬られる、倒れないのが斬る(事実は必ずしもそうであるまいが)――その決勝点で邪魔が入ったというのは、かの棒を持っていた変人が、
「待った!」