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だいぼさつとうげ

大菩薩峠1

中里 介山

Read 大菩薩峠1 (だいぼさつとうげ) by 中里 介山 (なかざとかいざん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 200,314 characters · 398 screens

Aozora Bunko

七兵衛は腕を組んで暫く考え、

「それでは……お前は傾城になるつもりかえ」

「この月中に、あのお雪様の妹分として、つとめをするように、きまってあるのでござんすから……わたしもその気になってしまいました」

七兵衛は、考え込んだ上で、

「そう腹がきまれば、それでいいようなものだが、わしに言わせると、それでは済まぬ、わしはお前を遊女傾城にしたくはないというものだ」

「けれども、おじさん……」

「わしは、お前を救い出しに来たはずなのだ、なんとしても一旦はお前の身受けをせにゃならぬ、それから先はお前の心任せ、江戸へ帰ろうと、こちらに留まろうと、文句は言わないつもりだが」

「身受けと申しましても、おじさん……」

「お金のことなら心配しなくてもいい、それはいくらかかろうとも承知の上だ」

「有難うございます」

お松は、また涙を拭く。身受けをされて自由になることが、お松にとって嬉しくないことはない、もし帰るべき家があり、手をとって泣き合うべき親兄弟があるならば一層のこと。七兵衛にしても、この娘をつれて帰って、引合せてやる縁者があるとか、思い合う男に添わせてやるとかいう的があるならば、張合いがあるべきところだけれども、これを伯母のお滝に返してやろうか、または妻恋坂のお師匠様に預けようか――危ない危ない、ここに置くよりも危ない。