Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

だいぼさつとうげ

大菩薩峠10

中里 介山

Read 大菩薩峠10 (だいぼさつとうげ) by 中里 介山 (なかざとかいざん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 285,635 characters · 558 screens

Aozora Bunko

「水を一ぱいおくんなさい、どうも、いいかげんかけ廻ったものだから、咽喉が乾いてたまらねえ、愚痴は言わねえから、水を一杯だけ恵んでやって下さい、御当番の旦那……いけませんか。いけなけりゃ、右や左の、通りすがりのお旦那様に、お願い申してみよう。憐れながんりきに、水を一杯恵んでやっておくんなさいまし」

イヤに哀れっぽい声を出して、がんりきの百蔵が所望する水一杯を、誰も相手になって、恵んでやろうとするものは無いらしい。がんりきは、口の中をしきりにつばでうるおしながら、

「ねえ、水を一杯……水を一杯飲ませてやっておくんなさい、御当番の旦那」

だが、御当番の旦那といわれた辻番の足軽は、最初から受附けず、やむなくがんりきは往来の者を見かけて、

「済みませんが、水がいけなければ御当所名物の梅干を一つ、梅干をたった一つだけ、心配していただきてえんでございます」

その無心をも誰も、相手にする者はない。

そこで、がんりきが、荒っぽい声を出して、

「やい、水だい、水を一杯欲しいんだい、一杯の水が飲みてえんだ、小田原というところには、人間に飲ませる水がねえのかい、いま、死んで行く罪人にも、末期の水てえのがあるんだぜ、もっそう桶に竹のひしゃくで……」