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だいぼさつとうげ
大菩薩峠11
中里 介山
Read 大菩薩峠11 (だいぼさつとうげ) by 中里 介山 (なかざとかいざん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 368,567 characters · 720 screens
「人間じゃあるめえ、狸だろう」
仏頂寺は悪態をつきました。
「どうだどうだ、仏頂寺、君は鼻も利かないと思ったら、眼もいけないのかえ、人間と狸の見さかいが無くなったのかい、もう長いことはないぜ、かわいそうに」
丸山勇仙が、仏頂寺をあわれむと、仏頂寺はふくれ出し、
「狸だい、狸だい、こっちから石を転がしてブチ落してくれべえか」
「よし給え、冗談じゃない、下から上って来るところを、上からころがされてたまるもんじゃない」
「ちぇッ、くだらねえ奴だなあ」
仏頂寺はいまいましげに、丸山は熱心に、兵馬は興味を以て、今しも上り来る人間そのものを注視していると、身が軽い、上から見たのでは、鳥ならではと思われる岩角の足がかりに軽く手をかけ、丈夫に足を踏んで、さっさと上り来って早くも三人の眼前に現われた時、何人よりも兵馬が驚嘆しました。
「鐙小屋の神主さん」
「おお、お前さんは、白骨の温泉で逢った若衆さん。こなたは……」
兵馬に挨拶した眼をうつして、仏頂寺を見た時に、仏頂寺はまぶしそうに横を向いて、いまいましそうに、
「ちぇッ、見たくもねえ」
「こいつは苦手だ――嫌い物だよ」
といって、丸山勇仙も横を向いてしまいました。